開業したはいいものの、何から手をつければいいのか分からない——という声をよく聞きます。最初の3か月にやることは、実はそう多くありません。この記事では、届出・口座づくり・帳簿づけ・保険の切り替えという4つの柱に整理して、順番に片づけるためのチェックリストをまとめます。
開業したら税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」、いわゆる開業届を出します。あわせて検討したいのが青色申告承認申請書です。青色申告を選ぶと帳簿づけの手間は増えますが、そのぶん所得計算上の取り扱いで有利になる部分があるため、事業として続ける前提なら早めに出しておく人が多いです。
提出の期限は、2026年7月時点では開業届は開業から原則1か月以内、青色申告承認申請は原則2か月以内という考え方が基本です。ただし、その年の途中で開業したのか年明けから始めたのか、以前に事業をしていたことがあるかどうかなどで期限の考え方が変わることがあります。正確な期限や必要書類は、国税庁の公表情報を確認するか、所轄の税務署・税理士にご確認ください。制度は改正されうるものとして、その都度確認するのが確実です。
この2枚を出すこと自体は、書式を埋めるだけの作業で30分もかかりません。後回しにすると期限の判断が難しくなるだけなので、開業日を決めたその週に済ませてしまうのがおすすめです。
次にやるべきは、お金の入口と出口を生活費から切り離すことです。屋号名義の口座でなくてもかまいません。個人名義でよいので、事業専用の口座をもう1つ作る。それだけで年末の負担が大きく変わります。
分ける理由は単純で、後から取引を仕分ける手間が消えるからです。生活用の口座に売上も経費も混ざっていると、明細を1行ずつ「これは事業、これは私用」と判断していくことになります。件数が増えるほどこの作業は苦痛になり、判断のブレも出ます。最初から口座が分かれていれば、明細がほぼそのまま帳簿の材料になります。
あわせて決めておきたいのが、生活費の移し方です。事業用口座から生活用口座へ、月に一度、決まった額をまとめて移す形にしておくと、事業のお金と生活のお金の境界がはっきりします。必要になるたび少しずつ引き出していると、結局どちらの支出か分からなくなり、口座を分けた意味が薄れてしまいます。金額は最初から正確でなくてかまいません。数か月動かしてみて、実際の入金額に合わせて調整していけば十分です。
クレジットカードも同じ考え方で、事業の支払い専用に1枚決めておきます。作り直すのが面倒なら、手持ちのカードのうち1枚を「これは仕事用」と決めるだけでも効果があります。なお、家賃や通信費のように事業とプライベートで共用しているものは、使用割合に応じて分ける考え方(家事按分)が一般的ですが、割合の根拠づけは個別事情によります。計算の当たりを付けたいときは家事按分 計算ツールが使えます。
帳簿は「開業してから」ではなく、開業のために使ったお金が発生した時点から記録を始めるのが安全です。開業前に買った機材や、名刺・Webサイトの制作費などは、開業費として扱えることがあります。領収書を捨ててしまうと後から復元できないので、迷ったら残しておきましょう。
記帳を始めるタイミングとしては、最初の売上が立つ前がベストです。売上が動き出してから仕組みを作ろうとすると、たいてい後回しになります。最初のうちは列を絞った表で十分で、細かい科目分けは後から整えられます。具体的な組み立て方は個人事業主の経理、まず作るべきExcel5選にまとめています。
同時に、請求書と見積書のひな形も先に用意しておきます。最初の案件が来てから作ると、屋号・振込先・登録番号の記載を毎回考え直すことになり、送付が遅れます。請求書ジェネレーターと見積書ジェネレーターは同じ雛形で作れるので、見積で出した内容をそのまま請求へ持ち込めます。原稿料やデザイン料など源泉徴収の対象になる報酬を扱う場合は、源泉徴収税 計算ツールで手取り額まで先に確認しておくと、請求書の記載で迷いません。
会社を辞めて独立した場合は、健康保険と年金の切り替えが必要になります。健康保険は市区町村の国民健康保険に入るか、前の勤務先の健康保険を一定期間続ける任意継続を選ぶかで、負担額が変わることがあります。年金は国民年金への切り替え手続きを行います。いずれも手続きの窓口や期限が決まっているので、離職日が決まった時点で自治体の案内を確認しておくのが安全です。2026年7月時点の一般的な流れとして書いていますが、制度や保険料の算定方法は変わりうるため、詳細はお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
最後に、3か月続けたい習慣がひとつあります。やったこと・入金・請求予定を、週に一度10分だけ書き残すことです。開業直後は判断の連続で、何がうまくいって何が空振りだったかが記憶から抜け落ちます。数行のメモが残っていると、確定申告のときも、単価を見直すときも、一次資料として効きます。書類のひな形をまとめて揃えたい方はテンプレート教材もご覧ください。
提出自体は後からでも可能とされていますが、青色申告の適用など、期限との関係で取り扱いが変わる部分があります。すでに売上が発生している場合は事情によって判断が分かれるため、税務署または税理士にご相談ください。
事業としての規模かどうかで所得の区分が変わり、それによって扱いが異なります。金額の大小だけで決まるものではなく、継続性や独立性なども踏まえて判断されることが多いです。判断は個別事情によりますので、迷う場合は専門家に確認するのが確実です。
開業のために使った支出は開業費として扱えることがありますが、金額や用途によっては別の扱いになる場合もあります。私用と兼用しているなら按分の検討も必要です。領収書を残したうえで、扱いは税理士に確認するのが安全です。
最初の3か月でやることは、届出を出す・口座とカードを分ける・帳簿とひな形を用意する・保険を切り替える、この4つだけです。どれも一度きりの作業なので、順番に片づけてしまえば後の運用はぐっと軽くなります。証憑の保存ルールもあわせて決めておきたい方は、電子で受け取った請求書・領収書の保存もどうぞ。
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