自宅で仕事をしていると、家賃や電気代は生活費と事業費が混ざったまま毎月出ていきます。「どこまで経費にしていいのか分からない」ままだと、多く見積もりすぎても少なく見積もりすぎても後で困ります。この記事では、家事按分が必要になる理由と、床面積・使用時間・使用日数という基準の使い分け、そして根拠の残し方までを実務目線で整理します。
自宅兼事務所で働く個人事業主の支出は、生活のための部分と仕事のための部分がひとつの請求書に混ざっています。家賃10万円のうち、寝室で寝ている分は生活費、作業机に向かっている分は事業の費用——という具合に、同じ支出でも性格が違うわけです。
この混ざった支出を、合理的な割合で「事業分」と「家事分」に分けることを家事按分と呼びます。事業に使った部分だけを必要経費として計上する、という考え方が基本になります。逆に言えば、按分せずに全額を経費にすると、生活費まで経費に混ぜたことになりかねません。全額を経費にできるかどうかは事業の実態によるため、一律の答えはないと考えておくのが安全です。
なお、税務の取扱いは制度改正で変わることがあります。この記事は2026年7月時点の一般的な考え方の整理であり、最新の要件や個別の判断は、国税庁の公表情報を確認するか税理士にご相談ください。
按分割合を決めるときによく使われる物差しは、大きく次の3つです。どれか1つを全費目に当てはめるのではなく、費目ごとに一番説明しやすいものを選ぶのが実務的です。
割合そのものの計算は家事按分 計算ツールで確認できます。面積や時間を入れると事業割合と経費計上額が同時に出るので、費目ごとに数字を並べて比べるときに便利です。3つの基準で出した割合を並べてみると、その費目にどれが一番しっくりくるかが見えてきます。
家賃・地代は床面積が第一候補です。仕事専用の一室があるなら「その部屋の面積÷全体の面積」で説明できます。専用の部屋がなくリビングの一角で作業している場合は、机まわりの面積に、さらに使用時間を掛け合わせて考えることもあります。持ち家の住宅ローンは、返済のうち利息部分と元本部分で扱いが異なり、住宅ローン控除との関係も出てくるため、判断は個別事情によります。返済額の内訳を把握したいときはローン返済 計算ツールで確認しておくと話が早くなります。
電気代は使用時間で考えるのが一般的です。1日のうち何時間パソコンや照明を事業で使ったかを基準にします。事業用の機材が多い場合は、床面積と使用時間を組み合わせて説明することもあります。水道代は、業種によっては事業との関連を説明しにくく、按分の対象としない判断をすることも少なくありません。
通信費——スマートフォンやインターネット回線は使用時間、あるいは通話・通信の内容で分けます。仕事専用の回線や番号を分けてしまえば、その分は按分不要で全額を事業費として扱いやすくなります。迷う時間が長い費目こそ、契約を分けるほうが結果的に安上がりです。
自動車は使用日数か走行距離が基準になります。「月30日のうち仕事で使ったのが8日」「総走行距離のうち事業分が何キロ」といった形です。ガソリン代・自動車保険・車検費用・自動車税などを同じ割合でそろえておくと、後から説明するときに矛盾が出ません。
家事按分でいちばん大事なのは、割合の正しさよりも根拠を自分の言葉で説明できることです。税務調査で問われるのは「なぜ40%なのか」であって、40%という数字そのものではありません。次のようなものを残しておくと、数年後の自分も助かります。
これらは特別な様式が必要なわけではなく、Excelの1枚で足ります。経理まわりの資料をどう整えるかは個人事業主の経理、まず作るべきExcel5選でも触れているので、あわせて確認してみてください。
按分割合を途中で変えることも可能です。引っ越して間取りが変わった、専業化して稼働時間が増えたなど、実態が変わったなら割合も変わるのが自然です。ただし、理由もなく毎年上げ下げすると説明が苦しくなります。変更するときは「いつから・なぜ・どう変えたか」をメモに残し、変更した年の帳簿と一貫させておきましょう。
専用の部屋がなくても、実際に事業で使っている範囲を合理的に説明できれば按分の対象として扱われることが多いですが、判断は個別事情によります。作業スペースの面積と、そこを事業に使っている時間の割合を掛け合わせるなど、根拠を組み立てておくとよいでしょう。
「この数字までなら安全」という一律の基準はありません。重要なのは割合の大小ではなく、実態に沿っているかと、その根拠を示せるかです。生活の実感とかけ離れた割合は説明が難しくなるため、面積や時間の実測から積み上げるのが基本になります。
支出があったこと自体を示す資料は必要です。クレジットカードや口座の引落明細、契約書などが手がかりになります。証憑をどう保存するかは電子帳簿保存法にも関わるため、最新の要件は国税庁の公表情報や税理士にご確認ください。
家事按分は「いくら落とせるか」のゲームではなく、実態を数字に翻訳する作業です。費目ごとに床面積・使用時間・使用日数のどれで説明するかを決め、その根拠を1枚のメモに残す。この2つができていれば、確定申告のたびに悩む時間はかなり減ります。まずは家事按分 計算ツールで自分の割合を出してみてください。
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